【行ってきた】貼り絵原画の繊細さに感動!創作の源泉に涙…『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展@松屋銀座【現地レポ】

自分が親になった時、「あの本を我が子にも読んであげたい」と、思い浮かんだ絵本はありますか? 私にとって、そんな絵本の一つが、せなけいこさんの『おばけのてんぷら』でした。
今では6歳になった娘も2歳の息子も、この絵本が大好き。何度も「よーんーで!」「もっかい!!」とリクエストされるほどのお気に入りです。そんなせなけいこさんの原画展が、松屋銀座で開かれると知って、初日にお邪魔してきました!
正直にいうと「グッズが欲しい!」という気持ちが大きかったので初日に一人で行きましたが、展示内容に泣くほど感動してしまったので、レポートします!
『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展 概要記事はこちら↓
チケットは会場で当日券も販売していますが、混雑が苦手だったり、行く日が決まっている人は、ローソンチケット(https://l-tike.com/event/mevent/?mid=547371)での事前購入がおすすめ。「優先入場」チケットを買えば、同じ値段で10-13時までの間、特別レーンで「優先入場」ができます。
というわけで、さっそく原画展へ。
『ねないこだれだ』のおおきなお化けが印象的な入り口では、おばけが「こっちだよ〜」と案内してくれています。
せなけいこ先生のプロフィールに涙…。子育てと夢の両立への情熱と強さ
お恥ずかしながら、絵本を好きといいながら、作者のせなけいこ先生のことはあまり存じ上げずお邪魔しました。なので、展覧会の最初のにあったこの、せな先生の略年譜を見て、思わず泣いてしまいました…
1931年12月生まれ、ということは現在89歳になられる戦前生まれのせな先生。
1950年、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)付属高等女学校を卒業。美大進学を母に反対され、自立するために就活する。日本銀行に勤めはじめ、外国為替局業務係の初期に任命される。 1951年、第5回動画展の開催記念パーティーで、童話作家の武田雪夫に、武井武雄を紹介してもらい、10人目の弟子となる。 1952年、出版社への売り込みに励み、「貼り絵」を表現技法として生み出す 1956年、日本銀行を退職。『ジュニアそれいゆ』のカット掲載で初めて目次に名前が紹介される。 1957年、ユニグラフの名作童話シリーズの幻燈を数多く手がける。 1963年、結婚。1964年長男誕生。1967年長女誕生。 1969年「童画ぐるーぷ 車」に「めがねうさぎ」よりを出品。 同年11月「いやだいやだの絵本」(福音館書店)4冊シリーズで絵本作家としてデビュー
「女が働く」ということが、今よりもっともっと難しかった時代に、「まず自立するために働く」同時に自分の夢を諦めないために「働きながら作家に弟子入りする」そして、「売り込みを続けながら自分だけの作品を生み出す工夫を重ねる」…
もう、この情熱。自分がやりたいものに対して必死に挑むバイタリティーに感嘆してしまう。19歳から働きながらダブルワークで夢を追い、腕を磨いて専業になり、キャリアを積むも、30を過ぎて結婚・出産。そして育児中に浮かんだアイデアを源泉に37歳でグループ展に出展したことで、絵本作家デビューを掴む…。号泣…。
いや、どこで泣く要素があるかわからない…という人も多いかもしれませんが、出産、育児に向き合う中で、自分の今まで積み上げてきたキャリアや、やりたかったことを諦めたり、手放したりした経験のある親(自分含め)にとっては、もうここまででNHKの朝ドラにして欲しいぐらい励まされて、勇気をもらえると思います。
朗らかに笑う優しそうなプロフィール写真では、釣り合いがとれないほどの芯の強さ。学びたい。
子どもを傍で制作するのに適していたのが「貼り絵」。包装紙の味わいも
展示の話に戻りつつですが、せなけいこさんの素晴らしさは、今まで自分が培ってきた「貼り絵の絵本」というスキルに、子どもとの経験を掛け算して絵本作家としてのキャリアを花開かせているところ。
イヤイヤ期の子どものリアルをユーモラスに描いた『いやだいやだ』、にんじん嫌いの息子が、にんじんをおいしく食べられるようにと描いた『にんじん』など。自身で手作りしていた本が、福音館書店の編集の目に止まってのデビュー。翌年にはサンケイ自動出版文化賞。
その貼り絵のやさしい風合いは、絵本からも伝わりますが、原画を見ると本当に繊細な、手作りのぬくもりが伝わってきます。
この一見、絵を書くより手間がかかりそうな「貼り絵」の技法も、子育ての傍で制作するせなさんが、一気に仕上げなくてはいけない絵の具に対して、「いつでも手を止められる」方法として選んだものだとか。
材料も『めがねうさぎ』のうさこが着ている洋服は、近所の文房具店の包み紙だったり、味わいの出し方が絶妙です。
そのほかにも、初期のお化け絵本やゆうれいシリーズなど、貼り絵原画の充実っぷりには目を見張るものがあり、きっとあなたのお気に入りの1冊の原画も、展示されていると思いますよ。
原画の展示だけでなく、くわしい解説やオブジェなどの空間演出も楽しい!
原画や資料の充実ぶりもかなりの見応えですが、その解説がとても丁寧なので、せなけいこ先生自身や、多くの作品のことをそれほど知らなくても、楽しめる内容になっていました。
ところどころに絵本から飛び出したようなキャラクターのオブジェなどもあり、ファミリーできたらキャラと一緒に写真を撮ったり…という楽しみもあると思います。展示内容には大満足。そして、お待ちかねのグッズ販売ゾーンに向かいます!
『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展@松屋銀座 グッズ編はこちら!
<information> 《開催概要》 【展覧会名】 『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展 【会期】 2020年12月27日(日)~2021年1月12日(火) 【会場】 松屋銀座8階イベントスクエア 【開場時間】 午前10時~午後8時 ※12月27日(日)、1月11日(祝・月)は午後7時30分、 12月31日(木)は午後6時、最終日は午後5時閉場。 ※入場は閉場の30分前まで。 ※1月1日(祝・金)は休業。 【入場料】 一般1,200円、高校生700円、中学生500円、小学生300円 ※チケット購入の詳細は、展覧会公式ホームページにて決まり次第更新いたします。 ※混雑の際は、お待ちいただく場合や整理券を配布する場合があります。 【問い合わせ先】 03-3567-1211(大代表) 【公式サイト】 https://www.asahi.com/event/senakeiko50th/ 【主催】 朝日新聞社 【協力】 偕成社、KADOKAWA、金の星社、鈴木出版、童心社、福音館書店、ポプラ社
©️Keiko Sena
取材・文/サカイカオリ
※掲載情報は2020年12月27日時点のものです。あくまで個人が行ったその時の感想ですので、展示内容等には変更の可能性もあります。